こんにちは。和歌山大学観光学部、木川研究室11期生の髙木駿佑です。
3月18日の前夜祭から20日の最終日にかけて参加させていただきました。
第8回となる日本国際観光映像祭は
「日本の源流へ。山と里が紡いだ文化に住む。」
がキーワードです。
地域と観光の新たな関係を築き、持続可能な観光の未来を考える場となることを目的とし開催されました。
開催地、滋賀県甲賀市は豊かな森林と信楽焼や甲賀忍者など独自の歴史や文化を持つ地域で、
『あい甲賀 いつもの暮らしに「しあわせ」を感じるまち』の実現を目的としています。
そんな甲賀市の油日神社で前夜祭が開催され、経験の浅い私にも仕事を任せていただきました。
前夜祭は生憎の悪天候の中での配信でした。
若干予定より遅れて始まることになり、序盤は指示が飛び交い続け忙しかったです。
しかしながら、手早く機材を配置し、指示や伝達、求められる行動を察する空気感はやはり現場でしか学べません。
学生として撮影現場の仕事の一片を観察する機会は滅多にないことなので大変貴重な時間です。
合間を見つけては同じく参加していた先輩のアイデア、機材の名称、セッティングの手順等を携帯にメモをするなど、できる限り多くの物事をインプットできるよう観察していました。
観光映像祭を始めて知った時、「どのあたりに”祭“要素があるのか」ずっと疑問に思っていました。
しかし、新作の観光映像への期待を語るゲストの姿と観光映像祭に対して期待を寄せるスタッフ達の姿を見て、
考えは変わりました。
観光映像への造詣や開催の経緯を知らずとも、地域住民、来訪客、クリエイターの想いが一堂に会してひとつになる。それこそが、このイベントに”祭”という言葉が冠されている理由だと確信しました。
同時に、実際に出向かないと感じられない熱量と高揚感を配信で上手く伝えられない事にもどかしさを感じました。
配信自体が前夜祭から映像祭1日目にかけて機材トラブルが幾つかあったこともありますが、視覚的にわからないことを伝えることの難しさに気づかされました。
フィールドワーク等の学業の場や個人的な関心や事情がない限り、歴史的・伝統的な文化に関心があっても深掘りする機会は少なくなっている…と勝手に思い込んでいました。
しかし、実際に舞台袖で様々な映像をモニター越しに観て、観光映像を観る姿勢や観光映像を観る目を養えていない故に関心が向いていないに過ぎないことを観光学部生として痛感しました。
フォーラムで登壇者の方々から指定される様々な映像をモニターに送る度に、映像構成だけでなく観光に対する精神性や観光行動そのものの価値及びそれぞれの違いなどの深い話を聴くことができ、大変勉強になりました。
CMなどの15秒ほどの”刺激物”を与える商業映像とは違い、観光映像は観る側の主観や期待に働きかけるもので、
そこから派生するものが『コミュニケーション』であるという指摘と言葉の表現は、私にとって目から鱗でした。
「観光者に行動のきっかけを仕掛ける映像」という視点で視聴した際、複数人の視点で映像が切り替わる作品が多く、人間の五感に直接訴えかけているような手法の演出が一定数の観光映像作品にあるように見受けられます。
字面だけでは伝わらない情報や思いを映像に託して世に発信するという点で、最新の観光行動の考え方を映像という形で再確認させてくれる機会のように感じました。
また、「映像祭の部門に縦型動画があっても良いのではないか」という話題から始まった「観光映像による経済効果の測り方を”再生数”とした場合、無名の観光地が縦型動画を作ることは無意味なのではないか」という話の中で、
「短時間の縦型動画よりも、時間をかけてドキュメンタリーから得られる没入感で観光に対する気持ちを作る」、
「ドキュメンタリーをベースに人の心を動かす」など、観光映像の在り方やローカルな観光の傾向に対する議論が非常に面白かったです。
意図せずエンカウントしてこそ価値を見出せる魅力とそれらを観光商品として扱う際のギャップを、観光映像で
「何かが起きる…かもしれない」と感じさせられるような表現を創ることで観光行動のきっかけになり得る。
改めて、観光商品にドキュメンタリー性や意味づけを行うことの重要性と必然性を考えさせられました。
映像祭の内容とは話が逸れますが、
度々スタッフの方々から「将来について」「何を学んでいるのか」尋ねられました。
恥ずかしながら具体性のある将来のビジョンが固まっていない為、はぐらかすように
「公務員は合わないです、観光と映像制作に関わろうと思ってます」程度の返答しかできませんでした。
報告書を書くべく振り返る中で、世間の広さとこれから仕事と共に歩んでいく人生の長さに改めて気づかされました。
観光学部生としてではなく、己の性分に合った仕事はなにか、どのように日本社会と向き合うべきかを慎重に見つめ直す機会という点でも、学生という立場で関わるイベントへの参加は重要だと思いました。
観光行動の考え方に加え、社会問題、災害などにも触れることで一方的に体験の享受にばかりでないことを再認識できるという点でも、我々学生を筆頭とした一般的な”観光に少し関心がある”人間にとって観光映像祭は大きな意味があります。
観光地が観光者側に求めている事は何なのか、我々観光者に足りない感性は何なのか、撮る側である人間の意見や志は何なのか、日常において冷静に考える機会はありません。
観光地を支える人々の姿や生き様を正面から受け取らざるをえない映像祭の作品達は、私たちのなかにある観光に対する偏った知識を整理し、新たな関心を掘り出すことのできるものばかりです。
舞台袖から観ていても、アーカイブを見直して文章を書いている今でも、
「もう一度観たい」「行きたい」「語りたい」という観光に対する純粋な感情を生じさせ、
観光行動の原点に戻してくれる「知るきっかけ」として意義のある場だと思います。
是非、暇な時で良いので配信アーカイブも作品もご覧になってください。

髙木駿佑
研究室11期生
2002年5月11日生まれ、兵庫県川西市出身。
趣味は関西圏の街並みの建築探訪及び記録、写真撮影。
まち歩きの醍醐味は「偶然の発見」にこそあるものの、地理院地図等を事前に確認し探索する。最近、側溝の縁石に歩幅を合わせて歩くことで人通りの多い場所での建造物の計測が楽になる事に気がついた。
撮影はデジタル、フィルム、ジンバル、無人航空機など様々な媒体で試みている。
祖父が大正8年生まれということもあり、戦災の伝承に関心がある。
研究テーマについては現在検討中であるが、戦災の伝承やまち歩きに関連した観光行動のテーマを題材にすることを考えている。

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