日本中、世界中が新型肺炎による自粛、ロックダウンでえげつないことになっています。特に観光業、飲食業は明日をも知れぬ状況です。これが1ヶ月だけ、2ヶ月だけと限定された期間ならまだしも、今の自粛には期間の定めは見えず、苦しい日々が続いています。観光学部の教員としても卒業生が観光業界に多く居ますので、彼ら彼女らが心配です。生き残ってください。命あればこそ、です。

ゴールデンウィークに向けて、沖縄へ六万人の航空券予約が入っていることが話題となり、沖縄県知事も渡航延期のお願いをしたということがニュースになりました。そんな中、ツイッターで「#南の島を守ってくれてありがとう」のタグ付けが広がっているようです。

これは、奄美大島や石垣島の美しい写真をツイッターに上げて、島の美しさ、島への愛情を表明しながら、離島への観光自粛を促す動きです。現在の状況での離島観光は、島民向けのギリギリの医療を崩壊させる恐れがありますし、助かる命が助からなくなります。

「来ないでください」ではなく「守ってくれてありがとう」とエールを送る。この動きはとても美しいと思いました。

観光業の多い離島の人たちにとってもこの状況では経済的にも打撃は大きく大変なはずです。しかし、彼らが耐えてくれないと、私たちは美しい島を見に行くこともできなくなってしまいます。南の島を守ってくれてありがとう。そして、観光業、飲食業の方々、今、大変な時代に、私たちにとっても大切な、その仕事を守るために戦っていただいてありがとうございます。

今、世界の観光地はこのコロナ問題にどのように向き合っているのでしょうか。大事な映像をいくつか紹介します。次の映像はポルトガル政府観光局が公開した映像です。

 

これは3月20日にアップされた映像ですが、一ヶ月たった今の状況でも強く響くメッセージが込められています。ポルトガルという国は大航海時代に世界の覇権を取った時もあれば、内戦にクーデター、独裁政権から民主化と今に至るまで激動の歴史を生きてきました。それゆえに、この状況を冷静に見つめ、このような力強いメッセージを出すことができたのかも知れないです。

メッセージをしっかりと出す観光地としてはハワイも注目すべき観光地です。今年2月に開催された日本国際観光映像祭で受賞した次の映像は秀逸です。

「ハワイ島の自然は、あなたを待っていません」

この言葉から始まるハワイ州観光局が製作した映像ではハワイの調和が、美しい映像と歴史と共に紹介され、観光の奥深さを私たちに伝えます。これだけの言葉を書ける人が観光局にいること。そしてこの言葉を持ちながら観光地を運営していること、それは賞賛すべきことです。その背景にはハワイ島マウナケア山での超大型望遠鏡の建設反対運動に見られるような「住民の信仰と科学との問題」を始め、長年の対話の積み重ねがあるのでしょう。

社会的価値と経済的価値。私は文化や歴史が紡いだ社会的価値が、経済的価値によって換金されることによって消費されていくのだ、と思っています。いわば「実りと収穫」です。今の観光では経済的価値が重視され、すでにそこにある文化や自然をいかに貨幣価値に変え収穫するのかに主眼が置かれています。しかし、本当はいかに社会的価値を高めるのか、文化や自然を実らせるか、それも観光の大切な仕事のはずなのです。

ハワイの観光は、この実らせるということを強く意識したものなのでしょう。ハワイ州観光局から4月17日に新しい映像が公開されました。

「アロハの精神」

歴史の中で人類は多くの困難と向き合っていました。災害、戦争。その避けることのできない運命の中で世界各地でアロハの精神が生まれてきた。それを私たちに再認識させる映像です。

自然とのつきあいが深い日本でも地震や火山、台風などの自然災害が多くの命を奪ってきました。また、湿気の多い日本です。病原菌には好都合な環境ですから、歴史の中で疫病との戦いは幾度となく繰り広げられてきたことでしょう。この自然との残酷な共生が私たちの文化を作り上げてきた、そう言っても過言ではないはずです。

ポルトガル、ハワイは語るべき「その言葉」を持っていました。この時代、日本からの言葉は世界に向けて発せられないものなのでしょうか。今、私たちがどのようなメッセージを出せるか。ここにポストコロナの世界、観光のありかたの明暗を分けるように思われます。

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